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【小説】ほろ苦い夜に

 富田です。プロット無しの一発書きは久々ですね。

 今回は『深夜ラジオ』をテーマとしました。
 拙い文章ではありますが、お付き合い頂ければ幸いです。
 それではどうぞ。

 やれやれ、今日も日付が変わってからの帰宅か。

 長かった病気療養期間を脱して仕事に就いたはいいものの、そんな日々がずっと続いていてはかなわない。しかし、折角手にした職だ。弱音は吐いていられない。明日は久方ぶりの休日。日中はどうせやることなどないから、存分に夜更かしだって出来る。

 部屋をさっと見渡すと、本棚の下には埃を被ったラジオがあった。何年…いや、何十年も使っていなかったせいか、電池は腐りきっていた。腐った電池を抜き、新し生命線である新しい電池に入れ替える。そして、ラジオの電源を入れ、ラジオに再び生命を吹き込む。

 ノイズしか受け取らないラジオ。アンテナを限界まで伸ばしてみる。それでもなおノイズしか拾わない。ダイヤルを回してみる。回す度に必死になって電波を拾おうとする音がする。懐かしい感覚だ。高校受験や大学受験以来だろうか。受験勉強の『お供』といえばテキストでもノートでもなく、このラジオだったことを今でも覚えている。この一台のラジオから流れてくる音楽やトークは僕の感性を刺激してくれた。今の僕のトークスキルもラジオが磨いてくれた…と云ってもいいかもしれない。

 幼い頃の僕は口下手もいいところで、会話というものが成立しないレベルでもあった。むしろ、まともに会話ができる方が珍しかったといってもいいかもしれない。それもあってか、幼い頃からずっといじめられていた…というよりも、まるで『空気』のように扱われていた記憶がある。流行やゲームに疎かった僕にはネタもなければ、周囲の話にもついていけない。そんな僕を周囲は良しとしなかった。そんな僕に興味を持つ人間などおらず、ずっと孤立していた。

 流行に興味もなければ、ゲームやテレビにも興味が無い…そんな僕を『空気』から『いじられキャラ』に変えてくれたのがラジオだった。ミュージシャンや芸人の昼間のテレビではとても放送出来ないような毒の強いトークや、最新の音楽やトレンドなどをまとめて入手できるラジオという媒体は僕にピッタリのものだった。

 第一志望の高校にも合格し、『高校デビュー』した僕。高校では影響を受けたミュージシャンや芸人のように振舞った。それらの振る舞いは僕を『いじられキャラ』に変身させてくれた。毒のある話や奇行・珍言。僕はクラス…というよりも学年屈指の『変人』としていじられることとなった。僕は周囲がそのような反応を示してくれることに喜びを感じていた。それは大学に入っても変わらなかった。

 その時の記憶を思い返し、ラジオを受験期に聴いていたあの局に合わせる。パーソナリティこそ変われど、今日も若者に向けて歓談をしているさまは変わらない。僕はあの時に戻ったような錯覚を覚える。今日もラジオからはあのオープニングテーマが流れてくる。明日も同じように流れてくるのだろう。これを聴く度、今日という日が終わり、明日が始まるのだな…と思える。

 もうすぐ、夜が明ける。

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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