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【小説】東須磨は夕方六時(5)

 富田です。今日も懲りずに『吐き捨てたガム70kg分』の小説をお送りします。
 よろしければどうぞ。


「・・・でも、次の曲は俺に歌わせて」

 ・・・快諾した。次の曲はオリジナルの曲だという。なんでも想い人のために作った曲だとか。どんな曲なんだろう。


 ―夏の風たちが 木々を揺らす 揺らす
 ―君を想えば 僕の心揺れる 揺れる

 ―僕は透明 だから君からは見えない
 ―僕の姿見せつけて 心揺らしに行きたい
 ―でも君は一緒 僕と同じ
 ―僕の心は段々と 君色に染まってゆく

 ―同じ僕ら 一緒になれるかな
 ―同じ僕ら 一緒になっていいのかな
 ―同じ僕らの恋 許されるのかな
 ―君にありったけの愛 伝えてもいいのかな

 ―僕は新しい場所で生まれ変わる
 ―でも君は変わらないで ずっと君のままでいて
 ―本当にわがままだけど


 ・・・自分が『透明』であることを自覚していて、それでもなお憧れの人と一緒になりたい・・・という気持ちをありったけの思いを込めて熱唱する中谷くん。ちょっとつたない歌詞ではあるけど、憧れの子に対する愛情はひしひしと伝わってくる。女子の少ない僕らの学校では『憧れの人と一緒にいたい』と思いたくなることは尚更あるだろう。そう思うあたり、中谷くんは普段は寡黙なだけで健全な男子高校生なんだな・・・と、ちょっと安心した。でも、肝心の相手は一体誰なんだろう。ちょっと気になるな。意地悪な口調で聞いてみることにした。

「今の曲、誰のことを想いながら歌ってたの?」

 ―深呼吸して答える中谷くん。

「・・・奈津希」

 さっきのって実は・・・実は・・・告白・・・?でも僕も中谷くんも男で・・・ということは・・・ええっ?

「俺、奈津希のこと、好きだわ。男が好きってわけじゃないけど・・・奈津希なら一緒にいたい、って思える。だから奈津希だから一緒にいたい」

 中谷くんの口から爆弾ワードがどんどん出てくる。爆弾こわい。僕は突然の告白に驚愕しながらも中谷くんを諭すように話しかける。

「・・・でも僕、男の娘なんだよ?女の子じゃないんだよ?本当にそれでいいの?」
「奈津希は奈津希だから。性別なんて関係ないし覚悟も出来てる」
「僕は男の娘だから、、実質的にはゲイになっちゃうんだよ?そこまで覚悟できてる?」
「出来てなきゃ奈津希に告白なんかしない」

 はっきりと、そして自信を持って答えてきた。女子ならまだしも、相手は男子だ。即答なんか出来るわけがないじゃないか。

「・・・ちょっと、待ってくれないかな」

 僕は消え入るような声で中谷くんに伝えた。気づけば六時をまわり、あたりも段々と薄暗くなってきていた。中谷くんの告白、様々な意味で勇気が要ったのだろうな。そして、なかなか苦労する性格なようで。

「・・・今日中には、答え、出せそうにないよ」

 僕は囁くように話した。そりゃそうだ。同性から告白されるなんて思っちゃいなかったんだから。女装だってあくまで個人的な趣味でありファッションな訳で、男に好かれたいがためにしているものじゃない。でも、でも―

「・・・わかった。そりゃそうだよね、男に告白されるとかさ、面食らっちゃうよね。俺は奈津希の返事、今年の夏中、待ってるから」
「今年の夏中・・・?」
「まだ先生以外の誰にも云ってないんだけど、俺、この夏休みが終わったら東京へ引っ越してしまうんだ。だから、無理な話だろうけど、奈津希に話しかけて一旦友達になって、一緒に思い出を作りたい・・・と思ってたんだ。あのとき、ちょうど奈津希が来てくれたのは本当にラッキーだったと思う」
「もしかして中谷くん・・・僕を呼び寄せるためにミッシェルとかエレカシとか歌ってたの?確かに自己紹介で音楽が好きです、とは云ったけどさ」

 中谷くんは照れながら。

「それもある。一か八かだったけどさ」

 つまり、僕は中谷くんの術中にまんまと嵌ってしまった訳か。この策士め、なかなかやりおる。そしてシャイながらもひたむきな性格に惚れ込む僕。それを踏まえて僕は結論を出した。

「・・・さっきはちょっと待って欲しいって云ったけど、あれは嘘。中谷くんがひたむきに努力する人だってわかったから。だから僕も中谷くんと付き合いたい。これで両想いだね」

 二人の顔が一気に赤くなる。僕は僕でよく声に出してみると恥ずかしいセリフを吐けると思うし、中谷くんは中谷くんで意外な答えに顔を赤らめている。

「中谷くんが僕を奈津希って呼ぶなら、僕も圭吾って呼ぶよ。いいでしょ?」
「いいよ、好きに呼べばいい」

 ・・・そういうところは結構ドライだな。それが圭吾の魅力でもあるんだけどね。そんな圭吾を見ていたら、またいじわるしてみたくなった。圭吾って、今まで気づいていなかっただけで、実はいじわるしたくなるタイプの男子だなぁ、などと思いつつ。

「圭吾っ」
「ん?」

 圭吾の頬にくちづけをしてみた。僕の不意打ちに圭吾はびくっ、となった。

「やりィ」

 圭吾の顔、今日は赤くなりっぱなしだな。

<つづく>

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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