スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【小説】東須磨は夕方六時(3)

 富田です。

 昨日、一昨日に引き続き、懲りずに『東須磨ラブ・ロック・フェスティバル』の元となったものをアップします。
 文章として破綻している部分が多くありますが、自戒を込めるという意味でもそのまま掲載します。

 …それではどうぞ。


 階段を上がり屋上を目指す。この扉の向こうで中谷くんがどんな顔をして待っているのかを考えると胸がドキドキしてきた。扉一枚隔てたところに僕だけが知っている中谷くんが居るという事実。そんなことを考えながら、おそるおそる扉を開ける。中谷くんは屋上の何に使われているのかよくわからない突起部分に、僕がいる屋上と下の階を繋ぐ階段を背にして腰掛け、アコースティックギターをかき鳴らしていた。今日の選曲はくるりの『青い空』。これから歌い始めるようだった。中谷くんはありったけの感情を込めて叫ぶように歌っている。繰り返しになるけど、そんな中谷くんの姿を知っているのは僕だけだと思うとやはりちょっとした優越感に浸れる。中谷くんは弾き語りに夢中で僕が来たことに気づいていない。そんな中谷くんにちょっといたずらしてみることにした。間奏で手拍子を入れてみたのだ。

「・・・遅えよ、カマ野郎」
「前奏を弾き始めた時からずっと居たけど?」

 やはり気づいていなかったようだ。そして僕がカマ野郎であることは不動らしい。

「・・・で、きょう、中谷くんは何で僕を呼び出したの?」
「・・・・・・・・・」

 なかなか云い出せないで居るようだった。気のせいかもしれないけど、心なしか赤面しているようにも見えた。

「カマ野郎・・・にしてもらいたいことがある」

 なんだなんだ?僕に呪縛でもされたいのか?・・・なんてね。そういうところだけは変にオトコオトコしている自分が時々嫌になってくる。それはそうとなんだろうか。ひょっとするととんでもない要求かも知れないちょっと怖いな。

「してもらいたいこと、って?」
「このあと、ちょっと・・・付き合って欲しい」
「付き合う・・・って?」

 おそるおそる聞いてみる。

「とにかくつべこべ云わずに付いてきてくれ」

 どうしようか。正直、面倒事に巻き込まれるんじゃないかと思った。録画していた映画『リトルトウキョー殺人課』を見るために早く帰りたい、とすら思った。しかし中谷くんの態度を見るかぎり、僕に断る権利はないようである。

「・・・わかった。僕で良ければ」

 まあいいや。面倒事に巻き込まれてもそれはそれで。もうこうなった以上はそれすらも楽しむ姿勢で行くしかないな。

「・・・じゃあ決まりだな、行こう」

 中谷くんは自分の六弦をケースに仕舞い、屋上を去ろうとする。ここで何かするんじゃないのか。

「・・・行くって、どこへ?」
「ついて来ればわかる」

 聞くだけ無駄なんだろうな・・・と思い、僕は中谷くんの後を追うようにしてついてゆくことにした。長くなだらかな坂道を下り、広い踏切へと差し掛かる。左に曲がれば東須磨駅、右へ曲がれば電車の車庫と住宅街。直進すれば美味しいと評判のパン屋がある。僕らが目指す場所は直進してしばらく行ったところあるらしい。中谷くんとは一言も交わさず、僕がカルガモの子のように中谷くんについて歩いていると、踏切が鳴り出し大阪行きの電車が轟音を立てて東須磨の駅へと入っていく。中谷くんと会うことがなければこの電車に乗って家路へと着いていたのだろう。踏切の遮断機が上がってそそくさと渡ると、中谷くんは後ろを振り返ることなく細い路地へと入っていく。しばらく歩いていると川が見えてくる。妙法寺川・・・だ。名前こそ聞いたことはあれど、実際に来るのは初めてだった。学校の近くにこんな川があったのか。そういえばこの辺で訪れたことがあるのは駅とコンビニや例のパン屋くらいのものだった。そうこう物思いに耽っているうちに、川岸の小さな公園へとたどり着いた。

「ここ。退屈でしょうがないときはいつもここで弾いてる」

 そう云うと中谷くんは西側を向いた木造のベンチに腰掛け、ギターケースからさっきのアコースティックギターを取り出し、チューニングをしながら僕に話しかけてくる。僕はちょっと距離を置いて中谷くんの隣に座る。やはりクラスで見る中谷くんよりだいぶ快活に見える。そして少し音を出した所で、ちょっと深刻な顔をして。

「・・・お前は、俺が見える?」

<つづく>

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

twitter
Pixiv
Pixivにも小説をアップしていますので、よろしければどうぞ。
http://www.pixiv.net/member.php?id=4716830
リンク
検索フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。