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【小説】東須磨は夕方六時(1)

 富田です。

 今回の小説は5月に発刊した『東須磨ラブ・ロック・フェスティバル』の元となったものです。
 この作品はコミティア101を以って廃刊とし、加筆修正を加えた上で再録集『富田林』に収録の予定です。
 文章として破綻している部分が多くありますが、自戒を込めるという意味でもそのまま掲載します。

 …それではどうぞ。



 ふつうの恋愛とか人生って、なんだろう。

 男の子と女の子が仲良くなって、
 デートすること?

 そして、時が経ったら、
 結婚して、家庭を設けること?

 それがふつうの恋愛や家庭なら、僕らって―


 神戸市は須磨区にある東須磨学院高等学校の三年一組。
 決して弛緩しきっていることもなく、かといってストイックに勉強にだけ取り組んでいるということでもない、女子の少ない高校の一風景が繰り広げられているこの教室に、毎日毎日「校則違反」をして登校する僕がいた。

 葺合奈津希、十七歳。

 僕は自慢の黒髪を二つに束ね、女子としてはごく普通の制服姿で毎日を過ごしている。これだけでは何が校則違反なのか、やれ普通の女子生徒ではないか、と思われる方も多かろう。そう思われた方は是非とも『僕』という一人称に注目して欲しい。ここまで書けば勘の鋭い方でなくとも大方お分かりであろう。そう、僕は男子生徒なのである。僕は入学してしばらくはごく普通の男子生徒として登校していた。しかし、ある日を境に女子制服を身に纏い、女子の出で立ちで登校するようになったのである。何故なら容姿が女の子っぽいと云われることが多く、男子制服より女子制服のほうが似合うと唆されたからだ。それ以来ずっと女子制服。

「なっちゃんなっちゃん、おいしいクレープの店を見つけたんだけど、行かない?」
「おぅなっちゃん、これからサッカー見に行こうぜ」

 いわば男と女のハイブリッドである僕は男女双方から人気を集めていた。僕自身、本当に女子制服を着始めた頃こそクラスに戸惑いを与えてしまっていたけれど、僕自身は人付き合いは普通にこなす方だったので特に怪訝な見方をされることもなかったのである。しかし、彼の女装を快く思わぬ者もいた。

 担任の女性教師。
 そして、クラス委員の大石めぐみこ。

 彼女らは一人の生徒としての僕には一目置くことはあったが、女装に関しては許していなかった。それこそ、僕を見かけるたびに

「葺合くん、あなたは男子なんだから男子の制服を着てきなさい」
「奈津希・・・何で男なのに女子制服なんか着てくるわけ?」

 ・・・と咎めていた。特にめぐみこについては、自分で云うのもなんだけど、僕がそこらじゅうの女の子より可愛い出で立ちであったがために、嫉妬も含まれていたのでないかと邪推できてしまう。それはそうだろう。女の子でもない男なんかが人気をかっ攫っていれば、気に喰わないのもわからない話ではない。

 恋愛に関していえば、僕は無頓着もいいところだった。誰々と付き合ってるだの誰々が好きだのというスキャンダルはつきものであり、僕に関しても例外ではなかった。しかし、「僕、こんナリをしてるけど恋愛に興味ないから」の一点張りだった。事実、付き合っている子など一人もおらず、むしろ『みんなのアイドル』的な見方をされていた僕と付き合うことは一種の『タブー』とされていた。

 ・・・夏のある日、恋愛が何だ音楽がなんだロックが何だとクラスメイトの男連中と他愛も無い話をして帰ろうかとしていた頃。今日はいつもとちょっと何かが違う。

 ―遠くからかすかに音楽が聴こえてくる。

 ―もっと正確に云えば、激しいギターの音色が聴こえてくる。

 ―さらに云えば、かすかに聞き覚えのあるのは綺麗な声。

 ―さらにもっと云えば、聴こえてくるのはエレファントカシマシの『コール・アンド・レスポンス』。

 僕は少しばかり気になったけれど、この日は「ああ、誰かギターを弾いてるんだ」くらいにしか思わなかった。しかし、ギターの音色は毎日聴こえてくる。聴こえてくる曲も様々だった。エレカシにミッシェル・ガン・エレファント、ナンバーガール、くるり、中村一義。そしてゴイステやガガガSPといった青春パンク・・・。なんとなく純情で、なんとなくスレている感じの曲が多かったように思う。毎日々々どこからか聴こえてくるギターのサウンドと歌声が学校帰りのささやかな楽しみになっていた。

 <つづく>

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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