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【小説】愛だん歪と識意たえ消

 富田です。

 一発書きシリーズ第五弾、今回はサブカルチャーの集積地で繰り広げられる愛のストーリーです。
 女の子の愛がむき出しになっていくお話です…って、園子温か。

 …それではどうぞ。


 僕と彼女が知り合ったのは二年前のこと。高円寺のライブハウスへ『野性プラント』という芸人のトークショーを観に行った時のことだ。一人で行った僕と彼女が出会ったきっかけはツイッターだった。彼女の…

『野性プラントのトークショーでぼっちの奴、俺は右端の中央付近にいるから集合な』

 …というツイートがきっかけ。男だと思って下ネタ話でもするか、と思って行ってみたところ、彼女がそこに居た。

 彼女はあの男らしいツイートとは裏腹にとても大人しそうな…毒や下ネタ成分の強い『野性プラント』のトークショーに参戦するには似つかわしくない、清楚な雰囲気の子だった。しかしちょっと抜けたところのある彼女との相性は不思議と合致していた。笑うツボも同じような感じだった。本当に不思議なことだと思った。

 それから僕らは連絡先を交換しあい、共に『野性プラント』のライブへ行くのは勿論のこと、阿佐ヶ谷の『サンマルクカフェ』や新宿の『椿屋珈琲店』で頻繁に会うようになった。『野性プラント』の話をするのも当然といえば当然だが、そこから恋人はいるかだのなんだのという話へと変化していくようになった。この日は池袋にある純喫茶『タカセ』でコーヒーを啜っていた。

「今さ…彼氏とかいるの?」

 そう僕は問いかける。問いかけると満面の笑みで、

「全然いないよ。彼氏いない歴=年齢、だし」
「いっそ僕たち、付き合っちゃう?」

 そう冗談交じりで云ってみると、トーストを口いっぱいに頬張りながら、

「ああ、いいね」

 …とまあ、あっさりとした意外な返答。この一言がきっかけで僕らはお互い『友人』から『恋人』へと昇格した。まさかあの軽い一言がプロポーズになるとは。やれやれ、あの時はおったまげた。

 僕達の恋愛関係は順風満帆だった。いや、順風満帆なように見えた。それから暫くの時が経ってから中野区の野方にあるアパートに同棲するようになり、仕事以外ではいつでも一緒。仕事帰りも一緒に帰ることが多くなった。そんな僕達を見て周りは『バカップルぶりを見せつけている』などと評した。実際にそうだった。見せつけて、魅せつけていた。

 しかし、彼女は…日に日に壊れていった。彼女は過剰なまでに僕に依存するようになり、その勢いは日を追うごとに増していった。遂に彼女以外の女性との関係を全て断ち切るよう、そして休日には常に一緒にいることを命じられた。これを破ったら殺す、とまで云われた。僕の職場は男女率100:0の職場だったために職場での人間関係は維持することが出来た。しかし、久々に同期に会える…と思い心を躍らせて待っていた大学の同窓会は、彼女の命を受け直前になって欠席せざるを得なくなった。表向きは『家族都合』で。まあ、当たっているといえば当たっているのだが。

 しかし、職場の健康診断で女性と関わりを持たなければならない事態となった。眼科医が全員が全員、女性だったのだ。その事実だけは隠し通さなければ、いや、バレることはない。そもそもそれくらいで殺されることなど無いだろう…と思いながら、健康診断を終え職場を後にした。職場の前では彼女がいつものように僕を待っていた。彼女は満面の笑みで、

「女医さん、居たでしょ?」

 僕は感情が顔に出やすいタイプだったので、彼女は僕の心情をすぐに理解したらしい。その直後、腹に来る鋭い重みと痛み。僕は知らぬ間にうずくまっていた。どうやら彼女が渾身の力を持って僕の腹を突いたらしい。

「今度、他の女と関わったらマジで殺すよ?」

 そう云う彼女はやはり笑顔だ。しかし、その目に光はない。この時、やっと事態の異常さに気づいた。この女、狂ってやがる。僕は逃げる決心をした。最低限の荷物をまとめて同棲先から逃げようとした時、彼女が鍵を挿し、玄関の扉を開けた。丁度、僕が逃げる準備をしている最中に。僕は逃げるタイミングを完全に見誤っていた。

「何をしているの…?」

 一瞬で光のない目となり、僕の方を向く彼女。そして、包丁をキッチンの棚から取り出し、僕を壁際に追い詰める。間合いなどというものなど、そこにはない。包丁は僕の目と鼻の先に待ち構えていた。そして彼女は、

「前にも云ったでしょ…?
 もう…逃げられないよ…
 あたしは…もうぼっちになるつもりはないよ…」

 …と笑いながらつぶやく。そして、次の瞬間―

「永久に…一緒になろうね」と

 半笑いで―
 涙を流しながら―
 そう口にし―
 彼女は―
 僕の脇腹を―
 ―刺す。何度も刺す。

 意識、遠のく。これは夢なんかじゃないが―夢になっていくような感覚。
 身体中が、熱い。
 そして、彼女も―僕の後を追った。そして、渾身の力を込めて彼女が叫んだ。

「私達、いつまでも、一緒だよっ!」

 中野区野方に響き渡る永遠の愛を誓うワード。永久のカップルがここに誕生した。

 <おわり>



 <あとがき>
 オシャレサブカルな女の子の愛が歪んでいくさまが書きたくなったので、その衝動をぶつけてみました。
 それ以外は特にありません。はい。

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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