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【小説】できない

 富田です。
 今回は『モテたくてもモテない』男のお話です。
 最近は華のない話ばかりですみません。

 …それでは、どうぞ。



 彼女が、出来ない。

 そんな僕ももう22歳。一応、社会人として働いてはいる。周囲には結婚だのなんだのという話を進めている同級生がいるにもかかわらず、僕は未だに彼女いない歴=年齢だ。情けないやらなんやら…と云いたいところだが、周囲には僕と同じように、彼女いない歴と年齢がイコールの友人もそこそこ居た。その中に溶け込み切っていたから、齢22で彼女がいないというのは割と当たり前の話なのだろう…と思っていた。

 話を聞いてみるに、実際のところそんなことはなかったみたいだ。大学時代の友人と久々に飲む機会があったので話を聞いてみると、なんと彼には婚約者が居るというではないか。学生時代にはアレだけ『俺、結婚は一生かかっても無理だわ』と話していた彼。しかし、その発言とは裏腹にしっかりと彼女を見つけ、婚約にまで至ったというではないか。僕は彼のことを『同種』と舐めてかかっていた節があった…そう確信した。ショックが大きかった。

 そして、ショックに追い討ちをかけたのは『彼女が出来ない人間は人間性に致命的な欠陥がある』という説。僕は普通に暮らしていたつもりで、普通に人間関係を構築していたつもりだ。そのどこに瑕疵があるのか? …と、僕は疑問を抱かざるを得なかった。

 さあ、どうすればいいと思った?

 答えは簡単。普通の人間関係しか構築していなかったからだ。恋愛に打って出ることを避けていた。ただそれだけの話。逃げの姿勢が僕を彼女が出来ない歴と年齢をイコールにしていた。だから僕には彼女が出来なかったのだ。そうだ、きっとそうだ。その一線を越えることがなかなか難しいことだ、と思い込んでいたからだ。うん、そうだ。きっと。

 それからというものの、僕は気の合う人を見つけては『この人と僕は果たして相性が合うのだろうか?』という、云うなれば『品定め』をするようになった。傍から見れば非常に失礼極まりない男である…が、その時の僕はまだそれに気づけないでいた。そして、気の合いそうな人を見つけては片っ端からアプローチをするようになった。

 この時点で相手を『モノ』としか見ていないことが丸見えである訳だが、鈍感な僕はやはりそれに気づけないでいたのだ。それに気づかされたのは、以前にも会った婚約に至った友人の一言であった。

「お前さ、女なら誰でもいいって雰囲気が随所から滲み出ているよな」

 …僕はどうやら、潜在的にそう思っていたようだ。自分自身は普通だと思っていた。しかし、実際のところ僕も『人間性に致命的な欠陥がある』人間の仲間入りをしていたようだ。いや、元からそうだったのだ。その晩、僕は泣いた。自分自身の不甲斐なさ、下衆さ、そして厚顔無恥っぷりに。

 そして、後で気づいたことだが、その僕の『女なら誰でもいい』という空気は駄々漏れであったらしく、そのお陰で普通の人間関係すらも破壊していたということ。男女問わず、周囲の人間から避けられるようになっていた。『結構やり手だな』と僕を褒めてくれていた上司からの評判も、最悪なものとなっていた。僕の浅薄な言動や行動によって、何もかもを失ってしまったのだ。

 それから数ヶ月が経った頃、僕は会社を追われた。僕のアプローチがセクシャル・ハラスメント的な行為と判断され、解雇されてしまったのだ。今の僕から云わせてみれば、本当に自分自身が下衆じみていた、としか思えない。そのお陰で社会的信用すら失ってしまった。当然の結果だった。それからのショックは大きかった。

 …それから暫くが経ち、僕は何とか転職することができた。

 僕にはまだ、彼女が出来ないでいる。いや、作らないようにしている。
 僕にはまだ恋愛をする資格はない。まずは僕の『致命的欠陥』を修理することが先だ。
 それが出来たら、焦ることなく、『理想の彼女』を探し続けたい…と思っている。

 <おわり>

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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