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【小説】yoakemae

 富田です。

 今回はプロット一切なし、一発書きの短編をお送りします。
 一発書きであるが故に粗い部分もあると思いますが、興味のある方はご一読頂ければ、と思います。
 それではどうぞ。



 惰性で『今日』を生きてきた。

 僕は歳だけを食って生きているように思える。いくら社会人になったとは云えども、心の中は未だに中学生や高校生のままだ。そんな幼い僕自身が嫌いだし、更には幼いことへの恐怖さえ覚える。他人はいつから大人に成るのだろう。成人式を境に急に大人に成るわけでもあるまいに。不思議でならなかった。

 そんな僕も20代半ばに差し掛かった。僕は商社の営業マンとして仕事に奔走している訳だが、正直なところこの仕事が僕の性に合っているとは思えなかった。何せ商談相手は勿論、誰も彼もが大人だからだ。その経験から大人へと脱皮することが出来るか…とも思ったけれども、幼い自分を変えることなど、到底出来なかった。

 仕事をしつつも、永遠のティーンエイジャーとして生きていくことも考えた。まともな青春時代を謳歌することが出来なかった僕は、愛だ恋だという経験は全くなかった。よく『いい歳して恋愛経験のない人間は人格に問題がある』と云われるが、今となってはまったくもってその通りだと思える。僕は精神的に幼い。だから恋愛もできない。そう考えていた。

 しかし、僕が幼いということを『少年の心を忘れない人』と評価してもらえる節もあった。だから、何か釈然としないものはあったものの、自分から積極的に幼さを捨てようとは思わなかった。実際、今の職場においてもそう評価されているし、上司からは飲みの席で童貞気質があるとも評されたこともある。それも満更ではないな、と思う自分もいた。

 …でも、いつかは転機が訪れる。
 いや、その日が、やってきた。
 友人のツテで紹介してもらった女の子と付き合うことが決まったのだ。

 彼女は僕のことを『少年の心を忘れない人』と評価してくれる側の人だった。僕の我儘や幼さも全て受け止めてくれたし、時には目に余るレベルの幼い僕の行動や言動に対しては、厳しく指摘してくれたりもした。理想の彼女だった。

 僕は彼女のために、少年性を保ちつつも大人になる決意をした。しかし、それはなかなか難しいことだった。まずは少年性とは何かを考えなければならない。考えあぐねた結果、上司からも評された『童貞気質』と『純粋さ』であることにも気づいた。では、次にすべき作業は具体的に『童貞気質』や『純粋さ』とは何か、ということだ。

 行きついた答えは、『童貞気質』については性的欲求に対しての仄かな願望や妄想を抱くこと。『純粋さ』は額面通り、何に対しても純粋であること。これらが少年性の根幹ではないか、という僕なりの答えに行き着いた。要するに、幼すぎる部分だけを取り除いて今まで通りに振舞っていればいい訳だ。何だ、簡単じゃないか。

 …と思うだろう。実際はそうもいかない。幼い部分というものは習慣となっているが故にどうしても出てしまうし、かといって抑えこもうとすれば少年性を押し殺すことにも繋がってしまう。そのあたりの匙加減がどうも難しいのだ。『調整』しているうち、それらから逃げ出したくなることもあった。幼くてもいいじゃないか、と開き直ろうとしたこともあった。

 しかし、それでは彼女に申し訳ない。折角僕を評価し、愛してくれている彼女だ。彼女の信認には応えなければいけない。僕は何度も続く『今日』という日々を過ごしながら『調整』をし続けた。

 …そして、この歳になって初めて出来た彼女と、『今日』、僕はデートへ行く。『今日』まで続いてきた『今日』への決別の日。僕は『今日』、『今日』にサヨナラを云う。目覚めた時には、『明日』が来ると決めて。

 <おわり>

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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