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【小説】男の娘ができるまで。

 富田です。

 今回は『関西コミティア40』で出したペーパーを抜粋してみました。
 残り少ないコピー誌の販促も兼ねています(『関西コミティア41』にも持って行きます)。
 『関西コミティア41』へお越しの際にはお手にとって頂ければ幸いです。


 退屈なテレビから、愛だの恋だのを何のひねりもなく歌った歌がノイズのように流れる日々に嫌気が差しながらも、東須磨学院高等学校一年四組の男子・葺合奈津希(ふきあい・なつき)は高校生活を人並みに過ごしていた。

 彼は、かなりスレている…というよりネットスラングでいうところの『高二病』を患っていた。彼自身にはそんな自覚はないが、傍から見ればそう見えてしまうことは間違いない。自宅から学校まで、聴いていたのは、大抵が『ロキノン系』と呼ばれるジャンルの音楽であった。

 学校で、彼は『弄られキャラ』としての地位を確立していた。彼は、男風にいえば『イケメン』、別の言い方をすれば『女の子よりも女の子らしい』、そのような容姿であった。そのため、『アイドル』や『乙女』などと弄られることが多くあった。

 しかし、一部の女子はその状況をよしとしていなかった。あまりにも『女の子より女の子らしい』男である彼に嫉妬していた。そんな女子連中から陰湿ないじめを受けていた時期もあったが、彼自身は軽く受け流していた。「そんなんだからブサイク視されるんだよ」というように。

 そんな彼にも悩みがあった。『格好つけても格好つけても格好がつかない』ことであった。自分では格好をつけているつもりでも、「可愛い」といわれてしまう。どうしようか、と悩んでいた時期もあったが、もう諦めざるを得ない…と思っていた。そんな彼に転機が訪れるのは、そうして悩んでいた時期のことであった。

 寒さと暖かさが交叉する三学期の末、最寄り駅から朝の電車に乗り、『ゆらゆら帝国』の曲『夜行性の生き物三匹』を聴きながら、座れない電車の吊革をぼうっと掴んでいたところ、隣の男が読む週刊誌の一記事に目が留まった。女性にしか見えない男性、いわゆる『男の娘』と呼ばれる人種が注目されている、という記事。彼はその記事に釘付けとなり、週刊誌を読む男の目を気にせず読んだ。これだ。可愛いと弄られるくらいなら、いっそ思い切り可愛くなってしまえばいい…とスレた彼を決心させたのは丁度この時。

 それから彼は女性物の雑誌などを読みあさり、『女の子になる』ための研究を重ねた。肌が綺麗で色白な彼は、すっぴんでもそれなりに映えるものではあったが、若干の化粧は必要だった。そして、いつしか女装で外出もするようになり、あちらこちらで女の子と遜色ない―具体的にいえば、ナンパにも遭遇するレベルの風貌を手に入れていた。

 二年生に進級し、初夏の爽やかな風が吹く頃、彼はひとつの決心をした。それは、ここまで極めた女装で学校生活を謳歌すること。ここに『女装少年・葺合奈津希』が誕生した。彼は周囲に戸惑いを起こした後、『男』だった頃と同じようにアイドル視されることになるわけだが…。

 しかし、三年次に予想だにしない展開が待ち受けていることを、彼はまだ知らないでいる。


 <続きは既刊『東須磨ラヴ・ロック・フェスティバル』で!(宣伝)>

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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