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【小説】ぼくらの卒業旅行(第1話:前編)

 富田です。

 今まで書いてきた中からボツになった作品を少しずつ出していきたいと思います。
 ぐだぐだと続いていきますがお付き合い頂ければ幸いです。
 それでは、『続きを読む』からどうぞ。今回は山もなければ落ちもありません。



 二月中旬。

 卒業を決めた大学生が仲の良い友人や部活、あるいはサークルの仲間を引き連れ、卒業旅行と称して遠出を決める時期だ。ある者は航空機で沖縄へ飛び立ち、ある者は車で東北へ向けひた走り、ある者は列車に揺られ九州へ…といった具合に、各々が卒業前の僅かに残された自由時間を堪能する。また、卒業旅行の目的も様々で、純粋な旅行として旅をする者もいれば、見聞を広めるという確固たる目的を持って旅行に出る者もいる。また、部活の延長線として行く者も少ないながらもいる。しかし、中には不本意で卒業旅行に参加せざるを得なくなった者がいる者がいることも忘れてはならない。

 ある大学のとあるサークル。

 大学一年生から四年生まで同期が各々二人、女子は二人のみという零細サークルだ。四年生は旅行と作詩が趣味という白河清純(しらかわ・きよすみ)と、無趣味で自分の世界に入り込みがちな佐野和泉(さの・いずみ)の二人。和泉はこのサークルとしては珍しい女子部員であった。例年、このサークルにおいて卒業旅行が催されることは殆ど無いが、この年は卒業旅行が『半ば強引に』行われることとなった。

 二人は一年次からの知り合いではあるものの、事務的な会話以外の会話をすることは殆ど無かった。するとしても清純が一方的に話しかけるような形。それに対して、和泉は嫌悪感を覚えていた。極度の男性恐怖症だったからだ。そんな和泉が男だらけのこのサークルで四年間という決して短くない期間を過ごすことが出来たのは、先輩や後輩に女子がいたからであろう。兎にも角にも、彼女の視界には清純の姿など殆ど入っていなかった。

 そんな清純が卒業旅行に誘ってきたのは一月末のことだった。

「…卒業旅行、行かない?」

 ―といういきなりの一言に、和泉は激しい警戒感を覚えた。今まで事務的な会話しかせず、不快―何故、言うなれば名前とは正反対の、不純かつ下衆な男としか思えなかった男と卒業旅行などに行かなければならないのか。どうせ下心でもあるに違いない。そう思わずにはいられなかった。

「行かない」

 愛想なく、かつ突き放すように答えておく。しかしこの男、なかなか引き下がらない。毎日毎日、顔を合わせる度に同じ誘いをしてくる。しつこい。こんなしつこい男と卒業旅行など御免被る―と和泉は心底思っていた。それでもなお誘いは止まらなかった。耐えかねた和泉は遂に結論を出した。早い話が清純の誘いに折れたのである。

「わかった。行けばいいんでしょう」

 清純にとっては大変喜ばしいことらしく、満面の笑みを浮かべて和泉に話しかけてくる。

「ありがとう。本当にありがとう。最後だし、君との思い出を作っておきたかったんだ」

 どこまで自分本位なんだ、この男は。男との思い出なんていらない、とすら和泉は思っていたが、ここは『怖いもの見たさ』で誘いに乗ってみることにしたのだ。和泉にとっては大英断であった。

 本来なら何度か集まって綿密に行程を決めることになるのだろうが、清純は『三泊四日、目的地は東のほう、行けるところまで』という案を強く推してくる。この男と四日も一緒にいる―と思うと今から胃が痛くなってきそうだ。

「もっと短くならない?一泊二日とかさ」

 …と気だるさ丸出しで提言してみるものの、清純はそれでは『卒業旅行』を堪能できない、と先の提案をしつこいくらいにプッシュしてくる。話を早く終わらせたいと思っている和泉は、譲歩に譲歩を重ね、

「分かった。二泊三日なら行ってもいい。でもさ、目的地くらいどうにかならないの? 決まってないとかちょっと不安なんだけど」

 二泊三日という提言もあっけなく却下された。そして、清純は力説する。

「いや、敢えて目的地を決めないということがこの旅の肝なんだ。僕は目的地を決めずに列車に乗って、見聞を広めにいきたい。目的地を決めずに行けるところまで行く。そんなのはこういう時にしか出来ないと思う。だから敢えてそうしたいんだ」

 …なんとなく理解は出来るが、非常に面倒くさそうだ。いや、行程が面倒くさいのではなく、この男が面倒くさいのだ。寧ろ現段階でものすごく面倒くさい。卒業旅行に行くことを承諾したことそのものが迂闊だった…とすら思うようになった。しかしもう決めたことだ。清純に全てを委ねよう。そう思った和泉は―

「わかった。それでいい。ただ、条件をつけたい」
「条件?」

 すっとぼけた口調で発する清純。その条件とやらが非常に気になる。

「今みたいにしつこく語りかけないこと。そして―」
「そして…?」
「―私に下心を持たないこと。私、はっきり言って男が嫌いだから」
「わかった。承諾するよ」

 あっさり承諾した。和泉としては意外なようだった。また、自分が自意識過剰なのではないのではないだろうか…と併せて思ってしまった。この時点では気のせいだとは思っていたが。

 卒業旅行まではまだ時間があるが、とりあえず集合時間だけは決めておく。二人が住んでいる地域の主要駅に朝六時。和泉としては朝早くからこの男と顔を合わせなければならないと思うと反吐が出そうな勢いであったが、そこは耐えしのぐことにした。

 それから二人は顔を合わせる機会もあまりなく、会ったとしても以前とは打って変わって清純と和泉はお互い会話を交わすこともなかった。そして、そのまま当日を迎えることとなった。

 <つづく>

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

おはようございます。
読ませてもらいました。

どうなるのかな??
すごく楽しみです♪

Re: No title

>naonao☆さん
いらっしゃいませ。お読みいただきありがとうございます。
徐々にお蔵出ししていきますので、生暖かい目で見守っていただければ幸いです。
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