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【小説】うちの息子がこんなにモテないわけがない

 富田です。

 久々のプロットなし、一発勝負のSSです。毒にも薬にもならない話ではありますが、宜しければどうぞ。

 二十代の頃、息子には恋人や婚約者がいるものだと勝手に決めつけていました。

 息子の仕事場はいわゆる男職場であり、同性愛者でもない限り恋人が出来るような環境ではありませんでした。私達の息子は他の場所で恋人を探しているものだ…と勝手に思い込み、「恋人は出来たのか」などという質問を頻繁に繰り返していました。その度、息子は

「ああ…それっぽい人なら、いる」

 と答えるのみでした。

「今度連れてきてみなさいよ」

 と私が云うと、息子は決まって

「いや…まだそんな段階じゃない。恋人というわけでもないし」

 というように、言葉を濁してきたものでした。

「まあまあ、それでもいいから」

 と私達はしつこく催促しました。しかし、息子は頑なに応じようとはしませんでした。

 ある日のことでした。私達夫婦が使っているパソコンが壊れてしまい、息子のパソコンを使わねばならない事態があったのでデスクトップを見てみますと、夥しい数のゲームと思しきアイコンが並んでいるではありませんか。試しに一つのアイコンをクリックして開いてみると、そこにはなんとヒロインというのでしょうか―『萌え系』と云うのであろう女の子のイラストと名前がずらりと並んでいるではありませんか。

 その現実を見せつけられた私は総てのアイコンをクリックしてみることにしました。そこにも同じようなイラストと名前が並んでいました。

 私は、そこで初めて「息子に恋人など居ない」ということを認識したのです。そして、息子の云う「嫁」というものがパソコンの中にいるヒロインであることも。

 私はそのショックを隠しきれず、息子にそのことを問い質しました。どうして嘘で誤魔化そうとしたのか…などなど、様々問い詰めていきました。それを聞いた息子は『勝手にパソコンの中身を見られたこと』と『恋人の有無について過干渉していた』という事実に激怒し、私達に殴りかかろうとする勢いで私達を罵り始めました。

「ああそうさ、俺には本物の恋人など居ないよ。いや、出来ないんだよ。だから二次元の女の子に逃げていた。それだけの話さ。現実で家系を守るだのあんたらの期待に応えようとするだのしていればそれだけ空回りするだけさ。もういい、恋人の話などまっぴらごめんだ。放っとけ!」

 それがよほどショックだったのか、息子は家を出ていき、寮生活をはじめるようになりました。独り立ち―という意味では良い傾向であると思いますが、私たちは息子に期待を寄せすぎていたのかもしれない、とその時初めて思うようになりました。人間、親が期待するほどモテるわけではない。それをまざまざと見せつけられたものでした。

 あれから数年が経ったときから、息子に恋人が出来たという知らせは全く聞いていませんでした。いや、以前の事件を機に息子は私達と連絡を取ること拒むようになり、知らせを聞くことすら出来なくなってしまったのです。

 後になって知ったことですが、息子は恋人を作ろうという努力こそしていたものの、それが実ることはなかったそうです。息子は実家で喧嘩になった時に私達に対し罵った時のように、私達の期待に応えよう…いや、家系を守ろうと必死になっていたようでした。しかし、そう思いアプローチをするも空回りするばかり。良い結果へ傾くことはなかったと聞きます。

 そんな息子の心の傷に塩を塗るような真似をしていた私達を、息子が許そうとする訳がありません。「うちの息子がこんなにモテないわけがない」、その事実から目を逸らしていたのは私達父母だった。私達の過干渉のお陰で親子関係が崩壊してしまった―ということを、認識せざるを得なくなったのです。

 それから十数年後、息子が三十代半ばに差し掛かった頃でした。あれから数年連絡が途絶えていた息子から、我が家にに一通の葉書が届きました。往復はがきでもなんでもなく、写真入りの葉書。それとともに、葉書にはこう書かれていました。吉報でもあり、私達を息子が許すことは未来永劫ないのだ、という事実を認識させた悲報でもありました。

 ―私達、結婚しました。

テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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